約 3,152,070 件
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/60.html
アルゴニアン報告 このシリーズをまとめ読みするアルゴニアン報告 第1巻 アルゴニアン報告 第2巻 アルゴニアン報告 第3巻 アルゴニアン報告 第4巻 狼の女王 このシリーズをまとめ読みする狼の女王 第1巻 狼の女王 第2巻 狼の女王 第3巻 狼の女王 第4巻 狼の女王 第5巻 狼の女王 第6巻 狼の女王 第7巻 狼の女王 第8巻 オッタス婦人の案内書 このシリーズをまとめ読みするアンヴィル案内書 コロール案内書 シェイディンハル案内書 スキングラード案内書 帝都案内書 ブラヴィル案内書 ブルーマ案内書 レヤウィン案内書 火中に舞う このシリーズをまとめ読みする火中に舞う 第1章 火中に舞う 第2章 火中に舞う 第3章 火中に舞う 第4章 火中に舞う 第5章 火中に舞う 第6章 火中に舞う 第7章 狂気の十六の協約SI このシリーズをまとめ読みする狂気の十六の協約 第六巻 狂気の十六の協約 第九巻 狂気の十六の協約 第十二巻 黒い矢 このシリーズをまとめ読みする黒い矢 第1巻 黒い矢 第2巻 タララ王女の謎 このシリーズをまとめ読みするタララ王女の謎 第1巻 タララ王女の謎 第2巻 タララ王女の謎 第3巻 タララ王女の謎 第4巻 タララ王女の謎 第5巻 帝都の略歴 このシリーズをまとめ読みする帝都の略歴 第1巻 帝都の略歴 第2巻 帝都の略歴 第3巻 帝都の略歴 第4巻 ドゥーマー太古の物語 このシリーズをまとめ読みするザレクの身代金 (ドゥーマー太古の物語 第1部) 種たるもの (ドゥーマー太古の物語 第2部) 狙いどころ指南書 (ドゥーマー太古の物語 第3部) キマルヴァミディウム (ドゥーマー太古の物語 第4部) ドゥーマー太古の物語 第5部 ドゥーマー太古の物語 第10部 アズラと箱 (ドゥーマー太古の物語 第11部) バレンジア女王伝 このシリーズをまとめ読みするバレンジア女王伝 第1巻 バレンジア女王伝 第2巻 バレンジア女王伝 第3巻 パルラ このシリーズをまとめ読みするパルラ 第1巻 パルラ 第2巻 評論・深遠の暁 このシリーズをまとめ読みする評論・深遠の暁 第1巻 評論・深遠の暁 第2巻 評論・深遠の暁 第3巻 評論・深遠の暁 第4巻 ペリナルの歌KotN このシリーズをまとめ読みするペリナルの歌 第1巻 ペリナルの歌 第2巻 ペリナルの歌 第3巻 ペリナルの歌 第4巻 ペリナルの歌 第5巻 ペリナルの歌 第6巻 ペリナルの歌 第7巻 ペリナルの歌 第8巻 本物のバレンジア このシリーズをまとめ読みする?本物のバレンジア 第1巻 本物のバレンジア 第2巻 本物のバレンジア 第3巻 本物のバレンジア 第4巻? 本物のバレンジア 第5巻? 妖精族 このシリーズをまとめ読みする妖精族 第1巻 妖精族 第2巻 妖精族 第3巻 レヴェン四部作 このシリーズをまとめ読みする物乞い 盗賊 戦士 王者 2920 第一紀 最後の年 このシリーズをまとめ読みする2920 暁星の月(1巻) 2920 薄明の月(2巻) 2920 蒔種の月(3巻) 2920 恵雨の月(4巻) 2920 栽培の月(5巻) 2920 真央の月(6巻) 2920 南中の月(7巻) 2920 収穫の月(8巻) 2920 薪木の月(9巻) 2920 降霜の月(10巻) 2920 黄昏の月(11巻) 2920 星霜の月(12巻)
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/107.html
タムリエルの神々と崇拝についての概要 ブラザー・ヘッチフェルド 著 編者注: ブラザー・ヘッチフェルドは帝都大学研究序説部の準代書人である。 神々とは、世界の事象への関心を示すことによって評価されるものだ。ありふれた事柄に神が積極的に関わるという基本理念があるが、疫病や飢饉に対する神々のあからさまな無関心ぶりを鑑みることでその危うさに気づかされよう。 伝説的偉業への介入から日常生活における実体化まで、タムリエルの神の活動になんらかのパターンが認められたことはない。いろいろな意味において、神の関心は衆生界での毎日の試練とまるで関係のないところにあるのではないか。あるいは、そうしたことに関心がないだけなのかもしれない。が、例外はもちろんある。 歴史的な文献や伝説の多くが、絶望の時代に神、あるいは神々の直接介入があったことを指摘している。たいていの英雄譚では、神のため、神の神殿のために働き、戦った勇者に授けられた神の祝福について語られている。この世で知られている強力な秘宝のいくつかはもともとはこうした褒美として神から与えられたものだ。徳のある僧侶なら、望みが失われたときは神殿で神に呼びかけて祝福や援助を求めることができる、という報告もある。こうした神との接触や与えられる祝福が実際にどのようなものであるのか、それについては推測するより他はない。というのも、神殿はこうした神との交流は聖なるものであるとし、秘密にしておくからである。これらの接触が事実であるなら、神が俗世のことを気にかけていると信じているものにとっては心強いかぎりだろう。が、多くの状況において、まったく同じ神々が、苦痛や死の瀬戸際にあるものたちを前にしても手をこまねいて見ていることがあるのだ。まるで、手を下す必要などないと言わんばかりに。つまるところ、神のもちいる理屈や論理は人間の理解のほとんど及ばないところにあるのではないかという結論が導かれる。 すべての神や女神に共通するはっきりとした特徴のひとつが、崇拝や奉仕への興味であろう。神聖なる探求としての奉仕は、神々の気を引く数ある行為のうちのひとつでしかない。各神殿の規律や義務に従うことは日々の暮らしにおける奉仕の形であり、神々を満足させると考えられている。神殿で執り行われる儀式もまた神々の気を引くにはもってこいだろう。どういう儀式にすべきかは対象となる神々にとって異なる。結果がはっきりと目に見えるとは限らないが、犠牲や献納もまた神々の関心をこちらに向けさせるのに欠かせないとされる。 毎日の神殿生活における神々の直接介入が報告される一方で、平凡な暮らしにおける神々の存在が実際のところどういったものであるのかについては、おおいに議論の余地があろう。ウッドエルフのことわざに「こちらの奇跡はあちらの偶然」というものがある。毎日の暮らしに積極的に介入するとされる神もいるが、他方では、移ろいゆく出来事への無関心ぶりで知られる神もいるわけだ。 一説によると、賞賛や犠牲や奉仕による崇拝などから神々は実際に力を得ているという。神々の社会における総合的な地位は、その崇拝者の数によって決まるという論理すら成り立つかもしれない。これはあくまでも私的な推論でしかないが、小規模な宗教施設と比較して、大神殿では神の祝福や支援がさしたる苦労もなくあっさりと手に入るという明白な事実がその根拠となっている。 別の報告書によるとこの世には、人間の行動や奉仕をみずからの力に変えられる能力を持つ、まるで神のような霊魂が存在するという。こうした霊魂の真の姿を解明することで、神と神の崇拝者との絆についてのいっそう深い理解が得られることだろう。 こうした霊魂が存在することで、彼らは神や女神の領域までみずからを高められさえするのではないかという推測が導き出される。帝都神学校のモツスオは、こうした霊魂は、時の流れとともに信者のほとんどすべてを失った神や女神のなれの果てであり、神格の本源ともいえる最古の姿に退行したものではないかという説をとなえた。「古代の流儀」を実践するものたちは、この世に神はおらず、上級と下級の霊魂のみが存在すると口にする。ひょっとすると、これらの説はどれも真実であるのかもしれない。 神話・宗教 赤1
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/215.html
錬金術師の詩歌 ドゥーマー太古の物語 第5部 マロバー・サル 著 マラネオ国王おかかえの錬金術師が持ち場を去った 研究所での実験中に爆発事故を起こしたからだ 国王のおふれが回された 新しい術師を募集する 薬や何かを混ぜるのだ 王が選ぶと決めたのは 術と道具を使えるものだけ 愚かな術師はもうたくさん 検討、会議、話し合い 王は候補を2人に決めた イアンスィップス・ミンサークとウンファティック・ファー どちらもとにかく野心でいっぱい どちらがすごいか競うのだ 王は「試験を行う」と 薬草、宝石、書物にお鍋、軽量カップを用意した 透明ドームの屋根の下、部屋に2人は通された 「飲むと姿が見えなくなる薬を作り出せ」 笑い上戸の王様はやっぱり笑ってこう言った イアンスィップス・ミンサークとウンファティック・ファー 2人は作業に取り掛かる 薬草刻んで金属溶かし、奇妙なオイルを精製し 釜に入れたら温めて用心深くあわ立たす 中身を鉢に移したら混ぜて混ぜて混ぜまくる 時々互いを盗み見て、相手の様子を確認し 45分も経ったころ、 イアンスィップス・ミンサークとウンファティック・ファー どっちも自分が勝ったと思い、相手にウィンクしてやった マラネオ国王こう言った 「それでは今から自分たちの作った薬を飲んでみろ なべからひとさじすくい取り味見をして見せてくれ」 ミンサークが薬を口にするやいなや彼の姿は消え失せた ファーも味見をしてみたが、彼の姿はそのままだった 「銀とブルーダイヤモンドと黄色の草をちゃんと混ぜたと思うのか?」 王は笑って教えてやった。「見てみろガラスの天井だ 光がお前を惑わせて使うべきだった材料の 色を変えてしまったのだ」” 「ところで何を混ぜたのかな」浮かれてうるさい声がたずねた 「レッド・ダイヤモンドと青い草、それに金ではないのかな?」 「(ドゥーマーの神の名前)の力によって」ファーは若干おびえて言った 「私は自分の知能を高める薬を作りました」 出版社の注釈: この詩は明らかにゴア・フェリムの書く文体であり、解説も特に必要ない。AA/BB/CCという単純な旋律を踏んでいて、歌のようであるが意図的におかしな律動にしてある。あきらかにおかしな名前、ウンファティック・ファーとイアンスィップス・ミンサークというジョークが繰り返し現れる。最後にきわめつけなのが、錬金術師が頭の賢くなる薬を発明してしまうところだ。あたかも偶然の発明のように装っているが、空位期間にある聴衆の反知的探求に対して訴えかける形となっている。しかし、結局はドゥーマーに却下されてしまうことになるのだが。 マロバー・サルはドゥーマーの神の名を用いることを嫌がる特徴がある。そう呼んでよいかどうか分からないところもあるが、ドゥーマー信仰は、彼らの文化の複雑で難解な一面でもある。 千年の間に、この詩歌は学術書以外からは姿を消し、ハイ・ロックでは居酒屋の歌として有名になった。ドゥーマーの人々と同じような運命である。 茶3 詩歌
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/165.html
雪の王子 地に落ちる (白眼のイングヤルダー族長に仕える年代記編者のロックハイムによって書き写されたモーズリング戦記である) 彼が何処から訪れたのか我々は知らなかったが、彼は青白く素晴らしい軍馬に跨り、戦場へと乗り込んだ。エルフ、我々は彼をそう呼んだ、確かに彼はエルフだったが、その日まで我々が目にしてきた彼の同種とは異なっていた。彼の槍と鎧は未知のマジカによる明るく恐ろしい輝きを帯びていて、見事に着飾った正体不明の騎手は戦士よりも大きく見えた。 その時我々を最も悩ませ、否、驚かせたのはエルフの隊列から沸き起こった歓声だった。それは恐怖や驚嘆ではなく、呪われた者が人生のやり直しの機会を与えられたときに感じるような、臆面もなく解き放たれた歓びだった。それはソルスセイムにおける数多くの小競り合いの中でも、最もエルフ達の命運尽き、死に瀕しているときであった。モーズリングの戦いは、我らのこの美しい島におけるノルドとエルフの最終戦闘となるはずであった。イスグラモルを旗頭に、忌まわしいエルフたちをスカイリムから追い払い、ソルスセイムからも彼らを駆逐するつもりだった。ノルドの職人たちが鍛造し得る、最高の斧と刀剣で武装した我らの戦士は、敵の隊列に鋭く切り込んだ。モーズリングの丘はエルフの血で赤く染まった。なのに、なぜ我らの敵は歓んでいるのか? 一人の騎手が、絶望した軍にそれほどの希望をもたらせ得るのか? 我が種族の大多数にとって、その喚声の意味は明らかであったが、その言葉はエルフたちによって連呼される、エルフの歌の文句や雄叫びに過ぎなかった。しかしながら、我々の中にはその文句を十分に理解している学者や年代記編者がおり、その重大性に身を震わせた。 「雪の王子は到来せり! 破滅の時迫れり!」 水を打ったような静けさが、いまだ立っているエルフたちを包んだ。まるで船がフィヤルディングの氷海を切り進むように、雪の王子は群集の只中を疾走し、同族の隊列を分け進んだ。堂々たる白馬は駆け足から小走りへと速度を緩め、気味が悪いくらいゆっくりと隊列の先頭へと進んできた。 ノルドの戦士はその流血と戦闘まみれの生涯で様々な体験をするため、武装戦闘の中で何がおきても驚くことは稀である。しかし、あの荒れ狂う戦場が突然静止して静まり返ったことによってもたらされた、畏怖と不安感を想像できた者は極少数であったでろう。雪の王子が我々に与えた効果がそれであった。エルフの喜びに満ちた叫びが終わると、孤独な眠りの中でしか知られていない静けさが漂った。エルフとノルド、お互いの軍団がそれぞれ同じ理解で結びついたのはその時だった── その日のモーズリンク山の丘においての勝利も敗北も、たいして重要ではないということに。全員が共有した唯一の真実は、勝者であろうと敗者であろうと、その日は大勢が死ぬということだった。類を見ないエルフ、光り輝く雪の王子はその日、我が種族に死をもたらしに来たのだ。そう、大いなる死を。 旅人の視界を遮り、頑丈な館の土台さえも崩しかねない唐突な激しい吹雪のように、雪の王子は我ら大勢の中に飛び込んできた。確かに、彼の命令に応ずるが如く、氷と雪が彼の周りを乱れ飛んだ。光り輝く槍の回転は、雪の王子の前に立ちはだかった者に葬送歌を奏で、我らの最強の戦士たちはその日、彼の前に倒れた。(アンヴィルハンドの)ウルフギ、(白の)ストロム、(オークワンドの)フレイダ、(激高の)ヘイムダル。彼らは皆、死してモーズリング山麓に横たわっている。 その日初めて、実際に戦いの流れが変わった。雪の王子の行動に刺激されたエルフ達は、我らの隊列に最後の突撃を仕掛けるために集結した。その時、その一瞬でモーズリングの戦いは、突然で予期せぬ幕切れを迎えた。 ジョフリオールの娘、母親の従者でたった12歳の少女フィナは、彼女の唯一の親である母親を雪の王子が切り殺すところを見ていた。フィナは憤怒と悲しみから、ジョフリオールの剣を拾い、母親の仇に向けてどう猛に投げつけた。彼の輝く槍が死の舞いを止めたとき、戦場は静寂に包まれ、皆の視線が雪の王子に向けられた。その日、皆が目にしたその光景で一番驚いたのは彼自身であろう。なぜなら、雪の王子はジョフリオールの剣を胸深く突きたてたまま、馬上に座っていた。そして馬から、戦闘から、この世から、落ちた。雪の王子は一人の子供によって殺され、死に伏せていた。 彼らの救世主が敗れ、残されたエルフ戦士たちの戦意は失われた。多くは逃げ、戦場に残った者は皆、程なくして我らがノルドの大斧で切り倒された。日が暮れたときには、戦場の悲惨さしか残されていなかった。そしてその戦場では、雪の王子の華やかな鎧と槍が今なお輝き、その武勇と手腕をかすかに思い起こさせた。死してなお、この並外れた正体不明のエルフは我々を恐れさせた。 敵の亡骸の火葬はよく行われる。死は疾病や不安をもたらすため、これは習慣であると同時に不可欠なことでもある。我々の族長たちは、生死を問わずソルスセイムからエルフの群集を追い払いたいのだ。しかし、雪の王子はそのような運命にあらずと決められた。戦いでは並外れ、同族に愛されていた彼はもっと良く扱われてもいいはずだ。死していても、たとえ我ら民族の敵であっても。 よって我々は上質の絹で包まれた雪の王子の亡骸を、盛ったばかりの塚へと連れてきた。光り輝く鎧と槍は栄誉の台座に飾られ、貴族の墓にも等しい数々の宝で飾られていた。このエルフにこれ程の敬意を払うことに関して、族長たちは全員賛成した。彼の亡骸は、大地が許す限りその塚に保存されるが、ノルドの死者のみに許された、スタルリムの加護は与えられない。 これにてモーズリング戦記と地に落ちた堂々たる雪の王子の記録を終わる。彼に神の栄誉を、そして我らが生涯二度と彼のような者に会わないことを願う。 歴史・伝記 茶2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/62.html
幾人もの調査人が盗賊ギルドという難問を解いてみせようとした。組織としての盗賊ギルドは存在しないといくら証明されようとも、うわさ話が立ち消えになることはない。この謎の組織が実在する証拠を掴もうとする歴史家はいたが、何ひとつとして発見されず、目撃者は何も知らないと言い、隠れ家はもぬけの殻であった。故買人はただの業者だった。 ひとつはっきりさせておこう。盗賊は実在する。彼らはタムリエル各地の地下牢に投獄されているし、何人かの盗賊が徒党を組んで犯罪を行っていることも間違いない。まれにだが、窃盗その他の行為を何年も続けていたしぶとい盗賊団の存在が立証されたこともある。 しかし、ギルドはただの集まりではなく、会員名簿があるような組織であるとされている。財務構成がしっかりしていて、登録料やその他の資金確保の手段が確立されている。会員規約だってある。ギルドとはリーダーを頂点とする階層的組織で、組織内には昇級や継承の決まりも定められている。 立証されている盗賊ギルドでも最大のものはモロウウィンドにあった。わずかな期間ではあったが、郷神ジム・ステイシーが盗賊の組織を運営し、この島国で暮らす裕福な商人や貴族の家に盗みに入らせていたのだ。最近のネヴァリンの事件で、戦士ギルドと謎の人物、モラグ・トングがこのごろつきどもを一掃した。ジム・ステイシーの末路については定かではない。 モロウウィンドの盗賊ギルドはしっかりした財務構造を持つ、リーダーを軸とする組織であった。そういう意味では真のギルドにふさわしい条件を満たしていたが、短命であった。ステイシーの盗賊団が世間を騒がせたのはわずか数年でしかない。戦士ギルドが彼らを壊滅に追いやったと称される一方、ある歴史家は、ステイシーの盗賊団は地下組織化したにすぎないのではないかと見ている。 盗賊ギルドが存在しないと断定するには、きわめて論理的な問題がつきまとう。反対意見を証明することができないのだ。歴史家がその存在を記録に残してこなかったというだけでは、盗賊ギルドが実在しないと証明するのはとうていかなわないのである。 盗賊ギルドがシロディールで活動しているならば、犯罪がはびこっていてもよさそうなものだが、そういうことはない。盗賊とは、本質的に、長いあいだお互いを信用して仕事を続けることができない人種なのだ。生まれついての違法者なのである。そのため、盗賊のみで構成された法にもとづく組織は崩壊する運命にある。こうした理由から、現代の盗賊ギルドがシロディールで暗躍しているという主張には異議を唱えたい。 盗賊ギルド関連 社会 赤3
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/78.html
鎧の手引き この手引書は帝都の将校を対象とした、ウォーハフト将軍の監修による防具についての解説書である。 戦場では、兵士の防具は主たる任務に適したものでなければならない。斥候兵、軽騎兵、射手、尖兵には軽めの防具を身につけさせ、機動性とスピードを損なわせないことが肝要である。キュイラスとグリーヴは彼らの基本とも言うべき装備である。兜、篭手、ブーツは騎兵や尖兵には役立つが、斥候や射手には向いていない。 軽装は毛皮、革、鎖帷子、ミスリル、エルフ、碧水晶などから作られる。毛皮がもっとも安価で耐久性がなく、前述の順に質と値段が高くなっていき、碧水晶がもっとも高価で頑丈である。毛皮や革製の防具、鎖帷子は帝都のどこでもすぐに入手できる。ミスリル、エルフ、碧水晶はきわめて珍しい素材のため、古代の遺跡や僻地の墓所でしか見つからない。 重装は前線の歩兵、槍兵、重騎兵、歩兵騎士のための鎧である。将校に支給される鎧はすべて重装と決められている。どんなときも、兜、キュイラス、グリーヴは標準で装備しておくべきだろう。ブーツと篭手は騎兵や騎士のみが装備すべき防具である。 鍛冶屋は鉄、鋼鉄、ドワーフ、オーク、黒檀、デイドラから重装を鍛造することができる。鉄がもっとも安価で耐久力が弱く、前述の順に質と値段が高くなっていき、デイドラがもっとも高価で頑丈である。鉄や鋼鉄の胸当てはたいていの鍛冶屋で手に入る。その他の素材はとても珍しく、完成した防具となると地下深くに埋もれている古代の宝物庫でしか見つからない。 魔術師ギルドの熟練者なら、魔法で防具を強化する神秘を心得ている。黒檀やデイドラといった希少性の高い丈夫な素材から作られた防具には強力無比な魔法がかけられていることがままあるが、鉄製の防具でも魔法で強化することは可能である。 自称「戦う吟遊詩人」、アモラウス・ジャナスかつてコロヴィアの将軍についての風刺的なバラードを書き上げた。この将軍は数分ごとに装備を脱いでは着なおし、マジカの消費を節約しようとしていたのである。この遠まわしな批判に報いるため、将軍はファロー城の戦いではアモラウスを破城槌にくくりつけて戦ったということだ。 兵法・戦術 緑2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/229.html
狙いどころ指南書 ドゥーマー太古の物語 第3部 マロバー・サル 著 オスロバーの族長は、彼の賢者たちを集めこう言った。「毎朝、家畜が死んでいる。何が原因なのだ?」 ファングビス戦闘隊長は言った。「モンスターが山から下りてきて、家畜を食べているのかもしれません」 治癒師ゴーリックは言った。「新種の疫病が原因かもしれませんな」 ベラン司祭は言った。「女神に助けていただくには、生けにえを捧げる必要がある」 賢者たちは生けにえを捧げ、彼らが女神からの答えを待つ間、ファングビスは師匠ジョルタレグの下へ行きこう言った。「ゾリアの棍棒の鍛造や、それを戦闘でどのように使うのかを実によく教えていただきましたが、今は自分の技能をいつ使えばよいのかを知る必要があります。女神からの回答があるまで、または薬が効くまで待つのでしょうか。それとも山にいると分かっているモンスターを退治に行くのでしょうか? 」 「『いつ』は重要ではない」と、ジョルタレグは言った。「『どこ』なのかが重要だ」 ファングビスはゾリアの棍棒を手に持ち、暗い森の中を遠く、偉大な山のふもとまで歩いた。そこで彼は2匹のモンスターに出会った。オスロバーの族長の家畜の血でぬれていた片方は、連れが逃げるあいだ彼と戦った。ファングビスは「どこ」が重要であると言った師匠の言葉を思い出した。 彼はモンスターの急所5ヶ所を殴った。頭、股間、喉、背中、胸。五ヶ所を5回ずつ殴り、モンスターは倒された。そのモンスターは運ぶには重すぎたが、それでも意気揚々としてファングビスはオスロバーへ戻った。 「おーい、家畜を食べたモンスターを殺しました」と、彼は叫んだ。 「モンスターを殺したという証拠はどこにあるのだ?」と、族長は聞いた。 「おーい、私の薬が家畜を救いましたぞ」と、治癒師ゴーリックは言った。 「おーい、我が生けにえによって女神が家畜を救ったのだ」と、ベラン司祭が言った。 朝が2回すぎたが家畜は無事であった、しかし、3日目の朝、また族長の家畜が10匹殺されていた。治癒師ゴーリックは彼の書斎へ新しい薬を探しに行った。ベラン司祭はさらなる生けにえの準備を行なった。ファングビスはゾリアの棍棒を手に、またしても暗い森の中を遠く偉大な山のふもとまで歩いた。そこで、オスロバーの族長の家畜の血でぬれた、もう一方のモンスターに出会った。彼らは戦い、またしても、「どこ」が重要であると言った師匠の言葉を思い出した。 彼がモンスターの頭を5回殴ると、モンスターは逃げた。山沿いに追いかけ、彼が股間を5回殴ると、モンスターは逃げた。森の中を走りながら、ファングビスはモンスターを追い越し、喉を5回殴ると、モンスターは逃げた。オスロバーの田畑に入り、ファングビスはモンスターを追い越し、背中を5回殴ると、モンスターは逃げた。砦の下ではモンスターが嘆く音を聞き、族長や賢者たちが顔を覗かせた。彼らはそこから族長の家畜を殺したモンスターを見守った。ファングビスがモンスターの胸を5回殴ると、モンスターは死んだ。 ファングビスの名誉を称えて大きな祝宴が開かれ、その後2度とオスロバーの家畜が殺されることはなかった。ジョルタレグは彼の弟子を抱きしめ、こう言った。「やっと“どこ”で敵を殴ればよいのかを覚えたようだな」 出版社注: この物語もまた、ヴァーデンフェル島のアッシュランダー族に明らかな起源を持つ物語であり、彼らの最古の物語の1つである。「マロバー・サル」は単に登場人物の名前を「ドワーフ」らしい名前に変え、彼の書籍として再販売したのである。物語に登場する偉大な山は、森に覆われているとの記述をよそに、明らかに「赤き山」である。流星や後の大噴火が赤き山の植物を破壊し、今日の荒廃した外観を与えた。 原始的なアッシュランダーの文化を示唆するこの物語は学術的な興味を引くが、物語の中には今日のヴァーデンフェル島に存在する、遺跡のような「砦」での生活のことを話している。ヴァーデンフェル島とスカイリムの間の「オスロバー」砦についてさえも言及しているが、まばらに定住者が住むヴァーデンフェル島外の砦のうち、今日まで現存するものは少数である。学者たちは誰がいつこれらの砦を造ったのかについて合意しないが、太古のアッシュランダー族は今日のように麦わら小屋の野営地を設置するのではなく、これらの砦を使用していたことが、この物語や他の証拠からも明白である。 言葉遊びが寓話の教訓を形成する── どこでモンスターを殺すべきか(砦の下)はモンスターのどこを殴って殺すかと同等に重要である── これは多くのアッシュランダー物語の典型である。この物語のような簡単ななぞ掛けであっても、アッシュランダーや滅んだドゥーマーたちには好まれていた。ドゥーマーは通常なぞ掛けを出題する側として表現されるが、アッシュランダーの物語のように解く側ではない。 小説・物語 緑3
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/89.html
子供向けのアヌの伝記 最初のものたちはアヌとパドメイの兄弟でした。彼らが「虚無」にやってきて「時」が始まったのです。 アヌとパドメイが「虚無」をぶらついていると、光と闇がまざりあってニーアが生まれました。アヌもパドメイもニーアの出現に驚き、喜びましたが、彼女が愛したのはアヌでした。パドメイは傷心のまま行方をくらましました。 ニーアは身ごもりました。ところが、赤ちゃんを産む前にパドメイが戻ってきて、ニーアへの愛を打ち明けたのです。私が愛しているのはアヌだけなの。そう告げられたパドメイは怒りにまかせて彼女を打ちのめしました。アヌが帰ってくると、パドメイと戦い、“時”から追放しました。ニーアは「創造」を産み落としましたが、殴られたときの傷のせいで間もなく死んでしまいました。アヌはとても悲しみ、太陽の中に隠れて眠りにつきました。 そのあいだに、“創造”の十二界に生命が芽吹き、繁栄していきました。いくつもの時代が流れてから、パドメイは「時」に戻ることができました。「創造」に会うと、憎しみがわいてきました。彼は剣を抜き放すと、それぞれがつながっている十二界をずたずたに切り裂きました。アヌが目覚め、またもやパドメイと戦いました。長い、激しい戦いのすえ、アヌが勝利しました。パドメイは死んだものと思われました。アヌはパドメイを捨て置いて、十二界の破片をかき集めてひとつの世界── ニルン、つまり、タムリエル── にすることで“創造”を救おうとしました。そのときでした。パドメイの死にぎわの一撃がアヌの胸をつらぬいたのです。アヌはパドメイにしがみつくと、パドメイもろとも“時”の外へと身を投げました。 パドメイの血はデイドラとなり、アヌの血は星となりました。ふたつの血が混ざり合うと、エイドラが生まれました。(そのため、エイドラは善にも悪にもなれるのです。「創造」とのつながりがないデイドラよりも、エイドラのほうがこの世の出来事に深く関わっているのも頷けます) ニルンの世界は混沌に満ちていました。「創造」の十二界のゆいいつの生き残りが、エルノフェイとヒストでした。エルノフェイはエルフと人間の祖先で、ヒストはアルゴニアの樹木です。ニルンは内陸の海原をふくめたすべての大地ですが、大洋ではありません。 エルノフェイの世界の巨大なかけらは、それほど壊れることなくニルンに落ちました。エルノフェイの民はそのままそこで暮らし、エルフの祖先となったのです。エルノフェイの民は外界の混沌とをへだてる境界を強化し、彼らの静かな土地をこっそりと隠して、これまでと同じように暮らそうとしました。十二界が裂けたことによる大混乱のさなかには、他のエルノフェイの民もニルンにやってきて各地に散らばり、何年ものあいだ、仲間を見つけながらさまよい歩きました。最終的に、エルノフェイの流浪の民は、前時代のエルノフェイの民が暮らす秘密の土地をさがしあて、自分たちの類縁がいにしえの壮麗な暮らしをつづけていることに驚き、喜びました。流浪の民は、この安息の地で歓迎されると思っていましたが、エルノフェイのいにしえの民にとっては彼らは落ちぶれた下劣な民でしかありませんでした。くわしい理由はわかりませんが、戦争が起こり、ニルン全土へとその戦火が広がっていきました。いにしえの民が古代の神秘や知識を受け継いできていたとはいえ、流浪の民は数で勝っていたばかりか、長いあいだニルンで懸命に生き抜いてきたため、とてもたくましかったのです。この戦いはニルンの様相を一変させました。たくさんの土地が海に沈み、現在、わたしたちが知る土地(タムリエル、アクヴァル、アトモラ、ヨクーダ)だけがあとに残りました。いにしえの民の土地は、この争いで手ひどく荒らされたものの、後にタムリエルとなりました。生き残った流浪の民は、三つの大陸に散っていきました。 長いときをへて、タムリエルのエルノフェイの民は次のように分かれました。 ・マー(エルフ) ・ドワーマー(深きもの。ドワーフと呼ばれることも) ・チャイマー(変わりしもの。のちのダンマー) ・ダンマー(黒きもの、忌まわしきもの。ダークエルフ) ・ボズマー(緑の民、森の民。ウッドエルフ) ・アルトマー(古きもの、高きもの。ハイエルフ) 他の大陸では、エルノフェイの流浪の民が人間── アトモラのノルド、ヨクーダのレッドガード、アクバルのツァエシ── となりました。 ヒストの民はエルノフェイの戦をだまって見ていましたが、彼らの領地のほとんどは戦禍に巻き込まれて滅びました。難を逃れたわずかな土地はタムリエルのブラック・マーシュとなったものの、その大半は海のもくずと消えました。 やがて、人間がタムリエルに戻ってきました。まず最初に、伝説的人物、イスグラモルの率いるノルドが、先史時代にタムリエルの北岸に入植しました。歴史的文献にはじめて登場したノルドは、彼の家系の十三代目にあたるハラルド王です。この王の出現によって、神話の時代は終わりをつげたのです。 白1 神話・宗教
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/258.html
メイスの取り扱い 時に戦士は、メイスにはなんの戦術も必要ないと考えるという過ちを犯す。彼らは剣こそ技術のすべてであり、メイスは腕力とスタミナのみであると決め込んでしまう。メイス戦術の熟練指導者として言っておこう、彼らは間違っていると。 正しくメイスを使うには、タイミングと勢いがすべてである。メイスの一振りが始まると、止めるのも速度を落すのも難しい。戦士は打撃だけではなく、その反動にも全力を出さねばならない。敵が前のめりになっているとき、そしてできれば体勢を崩しているときに攻撃を開始すること。敵が後ろに反ることは容易に想像できるので、敵の頭の後ろを狙うこと。メイスがそこにたどり着く頃には、彼の頭がメイスの軌道上にあるであろう。 メイスは肩の高さで構える。攻撃前の巻き上げは、肩から手の幅の距離以上は持ち上げないほうがよい。振り下ろすときは、肘を先行させること。肘が鎖骨の高さを超えたところで、前腕を鞭のように伸ばす。加算された勢いがメイスをさらに早く、さらに強く動かし、遥かに多くのダメージを与えるであろう。 衝突する瞬間、手首の力を抜くこと。メイスは跳ね返り、硬い手首を痛めてしまう。打撃の反動を使ってメイスを構えの位置に戻す、それによって戦士は素早い2撃目の準備ができる。 兵法・戦術 茶4
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/187.html
火中に舞う 第6章 ウォーヒン・ジャース 著 デクマス・スコッティは、座ってリデオス・ジュラスの話を聞くことにした。だが、いまだにこの眼前の太った男が、かつてのアトリウス建設会社の同僚であるとは信じられなかった。辺りには、スコッティがさっきまで食べていたロースト肉の、香辛料の匂いが立ち込めている。この広いプリサラホールの中の周囲の物音はすっかり消え失せていて、まるでジュラス1人しかいないようである。彼は自分がこれほど感受性豊かであることに驚いてしまったが、実際のところ、霜降月初旬に下手な手紙で帝都から彼を導いてくれた男を前に、潮が満ちていくような感慨を味わっていた。 「どこにいたんだ?」と、ジュラスは詰め寄った。「何週間か前には、ファリネスティで俺と落ちあうはずだったろ?」 「もちろん、そこに行ったさ」あまりの剣幕に驚いて、スコッティはどもりながら返した。「そこで『アセイヤーに行け』っていう君のメモを見て、そこに行ったんだが、カジートが焼き払ってたんだ。それで、避難民達と別の村へ行くことになって。その村で、君がもう殺されたって聞いたんだけど?」 「お前、そんなこと信じてたのか?」と、ジュラスがせせら笑った。 「それを教えてくれた人は、君のことをよく知ってたから。レグリウスっていうヴァネック建設委員会の人で、彼も私と同じように戦争の後のヴァレンウッドの仕事を手伝うよう誘われたと言っていたよ」 「ああ、そうだったな」とちょっと考え込んでから、ジュラスは言った。「たった今、その名前を思い出したよ。この商売、きっと上手くいくぜ。何たって、帝都を代表する建設委員会の2人が、工事の入札の手筈を調えるのを手伝ってくれるんだからな」 「レグリウスさんは死んだよ」と、スコッティは言った。「でも、ヴァネック建設委員会の契約書は持って来たけど」 「おお、上出来だ!」と、ジュラスは感嘆の声を上げた。「ふん、お前がそこまで無慈悲になれる奴だったとはなぁ、スコッティ。まぁ、これでシルヴェナールの仕事もやり易くなったな。バスの紹介はまだだったな?」 スコッティはジュラスの隣にいる、ジュラスと同じ位の胴回りを持つボズマーの存在にはぼんやりとしか気付いていなかった。スコッティはバスにそっけなく目礼をしたが、まだどこかうわの空の気持であった。彼の頭には、シロディールへ安全に帰れるように、できるだけ早くシルヴェナールへ嘆願する、ということしかなかった。その後ジュラスと、ヴァレンウッドとエルスウェーアやサムーセット島との戦争からどうやって稼いでやろうか算段している時も、どこか他人事みたいに思えてならなかった。 「俺とあんたの同僚は、いまシルヴェナールについて話してるんだぜ?」と、今までかじっていた羊の脚を置きながら、バスは言った。「ちゃんと話を聞いてないようだが」 「少しぼんやりしてました。シルヴェナールというのは、とりわけすごい人なんですね」 「彼は民衆の代表なんだよ、法律的にも物理的にも精神的にも」と、新しい相棒の常識の無さに苛々しながら、ジュラスが説明してくれた。「ここの連中が健康なのも、ほとんど女ばっかりなのも、彼のおかげだ。もしも庶民が、食べ物や商売や外国からの邪魔に不平を漏らしたら、彼は連中と同じ気持になってその不平を避ける法律を作るのさ。つまり、彼は独裁者なのさ。ただし、民衆のためのだ」 「それは……」スコッティは適当な言葉を探し出した。「戯言だね」 「そうかもしれない」バスは肩をすくめてみせた。「だが、彼は、『民衆の声』という多大な権限を持ってる。その中には、外国の会社による建設許可や契約交換を認可する権利も、もちろん含まれている。信じてくれなくても構わんが。シルヴェナールをお前の所の頭のイカれた皇帝、例えばペラギウスみたいなもんだと考えてみてくれ。今現在、このヴァレンウッドは四方八方から攻撃されてかなり参ってる。シルヴェナールも、よそものに対してはすっかり不信と恐怖を抱いてる。たった一つの民衆の望み── つまりは、シルヴェナールの望みでもあるが── は、帝都が介入してこの戦争を終わらせることだ」 「皇帝が?」と、スコッティが尋ねた。 「あのイカレた皇帝に期待するのは無理かも知れんが」と言いながら、ジュラスはレグリウスの鞄から、空白の契約書を取り出した。「実際、あいつがどうするかなんて誰にも分からん。それより、レグリウス様のおかげで、随分と仕事がスムーズに行きそうだ」 彼らは、シルヴェナールと会うとき、どうやって自己紹介するかについて夜まで話し合った。スコッティは食事をつづけていたが、残りの2人ほどの量ではなかった。太陽が丘に登り始め、光が水晶の壁を通して3人を赤々と照らした。ジュラスとバスは、シルヴェナールに会いに行く代わりに、自分たちの部屋へ戻っていった。スコッティは、自分の部屋に戻ってジュラスの計画に穴が無いかどうか考えを巡らせていたが、冷たく柔らかいベッドに抱かれて、すぐに深い眠りへと落ちてしまった。 次の日の午後にスコッティは目覚め、体の調子が良いのを感じた。言い換えると、おびえてもいた。考えてみれば、この数週間、ずっと生死をさまよっていたようなものだった。極限の疲労を味わったり、ジャングルで獣に襲われたり、飢えてげっそり痩せ細ったり、おまけに、アルドメリの詩作についての議論に巻き込まれたりしたのだ。それに、ジュラス達との、どうやってシルヴェナールを騙くらかして彼の署名入りの完全に合法な契約書をこしらえるか、という討論もあった。そんなことを考えながら着古しの服に着替えると、食べ物とゆっくり考え事ができる場所を求めて階段を下りた。 「起きたか」というバスの声がスコッティの頭上から降って来た。「今から宮殿に行くぞ」 「今から?」と、スコッティは愚痴をこぼした。「見て下さいよ、この格好。今から女を買いに行くのとはわけが違うんですよ。『ヴァレンウッドの民衆の声』とやらは、あなたが独りで届けてきて下さい。風呂にも入ってないんです」 「いいか、この瞬間から、お前は事務員じゃなくて商人見習いだ」スコッティを燦々と陽が差す大通りに引っ張って来て、ジュラスが勿体ぶって宣言した。「まずやらなくちゃいけないことは、将来有望な顧客に何を示し、どういうやり方がしっくりいくかを考えることだ。大体、豪勢な衣装やプロの立ち居振る舞いなんかじゃ、お前はシルヴェナールの旦那を騙せないんだよ。そんな風にやろうとしたころで、失敗するのは火を見るより明らかなのさ。ここは俺に任しとけ。俺やバスも含めて何人かが宮廷に行ってみたが、何かしらヘマをしちまったもんだよ。がっついたり、格式張ったり、商売の話ばかりしようとしたり、な。それで、もう二度とシルヴェナールと会えなくなっちまったわけだ。だが、俺達は今でも居残っている。その後、宮廷についてぼんやりと考えてみたり、宮廷の情報を仕入れてみたり、ピアスを開けてもらったり、ぶらぶら散歩したり、がつがつ飲み食いしてた。あえて言うなら、1ポンドか2ポンドは太ったな。さて、俺達がシルヴェナールの旦那に伝えるべきメッセージは簡潔にして明瞭だ。『私たちにとってではなく、彼にとってとても興味深い面会になるでしょう』だ」 「計画は始まった」と、バスが付け加えた。「大臣に『我々帝都の代表者が到着しました、朝のうちにシルヴェナール様にお会いしたいので、すぐにでも連れて参ります』と伝えておいたよ」 「遅刻してるじゃないか?」と、スコッティは聞いた。 「ああ、大幅にね」とジュラスは笑みで返した。「しかし、それも計画の内さ。慈悲深く、私利私欲を見せずだ。シルヴェナールを、世襲貴族と間違えちゃいけないぜ。奴は、庶民の心の拠り所なんだよ。どうやって彼を丸めこんだらいいか、お前も分かるだろう?」 それから数分間、ジュラスはヴァレンウッドについて何がどれだけ足りないか、それにはいくらの金がかかるかについてという講釈を話しながら歩いた。その額は莫大なもので、規模も費用も、スコッティが今まで扱ったものよりも遥かに大きなものであった。スコッティはそれを注意深く聞いた。彼らの周り、シルヴェナールの街は、ガラスや花々、風のうなり声や心地よい気だるさを鮮明に感じさせた。宮殿に着くと、スコッティは立ち止まりあぜんとした。ジュラスはそんな彼を見つめ、笑った。 「変わってるだろ?」 その言葉の通りだった。緋色の爆発をそのまま凍らせたような、ねじれて不均衡な尖塔が太陽を付き刺さんとばかりに伸びている。小さな村ほどもある庭園には、廷臣や召使い達が、たくさんの昆虫のように、互いの体液を吸う勢いで歩き回っている。花びらのような橋を渡って、3人は不安定な壁に覆われた宮殿の中を歩いて行った。細かく区切られた区画があり、それぞれは日陰の集会所や小さな部屋であるらしい。何度か道を曲がって行くと、一行は壁に囲まれた中庭に到着した。そこには、ドアはなく、どうやら宮殿をぐるりと巡るらせん階段の他にシルヴェナールの所に行く方法はないようだった。つまり、会議室や寝室や食堂を通り抜け、高僧や王妃や宮廷楽団員や、それに大勢の衛兵の側を通って行くのだ。 「実に愉快なところだ」と、バスが言った。「だが、いささかプライバシーに欠けてるな。まあ、そこがシルヴェナールには好都合なんだろう」 宮殿に入ってから2時間後、廊下を歩いていた一行は、剣や弓をちらつかせる衛兵達に呼び止められた。 「私達は、シルヴェナール陛下との謁見を望む者達です」ジュラスは、辛抱強く言葉を選んだ。「こちらは、デクマス・スコッティ氏、帝都の代表です」 一人の衛兵が廊下を曲がって姿を消すと、背丈の高い、革を縫い合わせたローブを着込んだ高貴そうなボズマーを1人連れて来た。シルヴェナールの経済相である。「陛下は、デクマス・スコッティ氏、彼1人との謁見を御所望でいらっしゃる」 とやかく言ったり不安の色を見せたりしている場合では無かった。スコッティは、残る2人の方も見ずに歩を進めた。大体、彼らに泣きついたところで、無関心を装われるに決まっているのだ。大臣の後をついて行って謁見室に通された彼は、この謁見で重要なことを全て暗誦すると、ジュラスの立てた計画を心に思い描いた。 シルヴェナールの謁見室は、壁が天井に向かって次第に内側へ反っていき、緩やかなドーム形をしていた。何百フィートもの高さから、陽光が天井の隙間を縫って、銀色に輝く錦の上に立つシルヴェナールに降り注いでいた。この街や宮殿に比べ、シルヴェナール自身は至って普通に見える。体つきは太っても痩せてもおらず、穏やかで均整の取れた顔立ち、少し疲労の色が見えるが、帝都のどの州議事堂にもいるような、ちょっと変わったウッドエルフというところだ。しかし、彼が高座から降りてきて、スコッティは風変わりなところを見つけた。背丈が非常に低いのだ。 「私は、お前だけと話がしたい」シルヴェナールは、ありふれた、気取らない口調で切り出した。「書類を見せてくれないか」 スコッティはヴァネック建設委員会の契約書を手渡した。シルヴェナールはそれをじっと見ると、「帝都」という飾り文字の上に指を走らせてから、彼に返した。彼は何だか気恥ずかしくなって、床に顔を向けてしまう。「我が宮廷には」とシルヴェナールが言った。「この戦争で儲けようというペテン師どもで溢れ返っている。おおかた、お前や、お前の同僚もそうであろう。しかし、この契約書は本物のようだな」 「もちろんです」スコッティは冷静に応えた。彼のあまり格式ばっていない、へつらう様子もない口調は、シルヴェナールに好印象を与えたようだ。これは、ジュラスに教えられた通りである。「再建が必要な道路の話、アルトマーに壊された港の修復のお話をいたしましょう。それから、経済網の再整備に必要な費用の見積もりをお出しします」 「ところで、どうして2年前にエルスウェーアとの戦争が始まったときに、皇帝は使節を派遣してくれなかったと思う?」と、シルヴェナールがゆうつつそうに尋ねた。 スコッティは、返答する前に、このヴァレンウッドで会ったボズマー達との会話を思い出してみた。彼を国境からここまで護衛してくれた、金に汚くおどおどしていた兵士達。ファラインスティのウェスタンクロスにいた、大酒飲みたちや、害虫駆除(彼も駆除されそうになった)の射手達。ハヴェル・スランプの詮索好きなパスコス母さん。哀れむべき元海賊のバルフィックス船長。悲哀に満ちた、しかし希望を捨てていないアセイヤーやグレノスの避難民達。乱心と殺意に満ち、自身をも滅ぼす勢いのヴィンディジの荒野の狩人。マロンに雇われた、物静かで気難しい船員達。ちょっと風変わりなバス。もしも1つの生物が、それが住む地域の生物の気質を代表するというならば、その生物の個性とはどのようなものだろうか? スコッティは仕事上でも気質上でも事務員である。だから、目録や書類を作ったり、何かをシステムに組み込んだりすることには本能的に安らぎを覚える。もしもヴァレンウッドの人々の気質の欄に何か書き込まねばならないなら、いったい何がふさわしいだろうか。 ほとんど考えるまでもなく答えは出て来た。「否定」だ。 「私はその質問に興味がありません。すぐに商談に移って構いませんか?」と、スコッティは言った。 その昼の間中、2人はヴァレンウッドの再建計画について議論を交わした。全ての契約書に、記入と署名がなされていった。費用がどんどんと加算される一方で、余白にも追加条項が走り書きされていき、それにも署名が重ねられる。こうして素早く交渉はまとめられていったが、その内容は決して考え無しのものではないことに、スコッティも気付いていた。実際のところ、「民衆の声」の計画はかなり効率的なものであり、これに従えば、日常生活も上手く回っていくだろう。つまり、漁獲や経済利益や航路や森林の状態などが、事細かに考えられたものだったのだ。 「この契約の成功を祝して、明日の夜、祝宴を開こう」と、シルヴェナールが最後に言った。 「今夜はどうですか」と、スコッティは答えた。「この契約書を持って、明日シロディールに発たなきゃならないんです。なので、そこまでの路を確保して頂きたい。時間を無駄にしたくないんです」 「よかろう」と言って、シロディールは呼び寄せた経済相に封をした契約書を渡し、祝宴の準備に向かって行った。 スコッティが謁見室を出ると、ジュラスとバスに迎えられた。彼ら2人は、長い間気を揉んでいたせいか、すっかり顔が引きつってしまっている。衛兵達の姿が見えなくなると、すぐに彼に首尾を尋ねてきた。スコッティはすべて説明した。契約書を見せると、バスは、歓喜のあまり涙を流した。 「シルヴェナールを見て、何か驚いたかい?」と、ジュラスが尋ねた。 「背が低かったね。私の半分しか無かった」 「そうなのか?」と言って、ジュラスは少し驚いたようだった。「大方、俺達があんまりにも謁見しようと必死なもんだから、縮んじまったんだろうね。もしくは、民衆の苦境に心を痛めて、かな?」 物語(歴史小説) 赤1